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ケンゴの部屋

ケンゴの部屋

1月3日 山梨県採集

2006/1/3 新年初採集
「じゃあ、山梨に日帰りで採集に行くか?」

「うん、行く」

「だってオレ、まだオオクワ自分で採ってないもん」

二男の発熱で旅行に行けなくなり、
どうにも収まらない気持ちの長男であったが、
前回が楽しかったのか採集行きには積極的である。
が、オオクワ採集を甘く考えているので、こう言った。

「いいか、オオクワはなあ、何年、何十回通っても採れない大人が
たくさんいるんだぞ。滅多に採れないクワガタだから貴重なんだよ」

「え!何年も採れないの?・・・」

絶句する長男であった。さすが小学生、やはり甘い(笑)
ムシキングとは違うのである。

そんなこんなで1月2日、朝8時に現地入り。
まずはいきなり車の両側を枝がこするような林道に突入する。
「え、道ないじゃん!」びびる長男。今回はいろいろ経験させるのが狙いだ。
民家なし、人はいない。適当なところに車を停め支度をして山に入る。
ボサがそこそこあるので、歩くのにも時間がかかる。
「どうやって進めばいいの」さっそく音を上げる長男。
「いいか、少しでも通りやすいルートを判断して、
手でボサを払いながら歩くんだ。それとパパのすぐ後には着くな。
枝が跳ね返って危ないぞ。少し離れてこい」とアドバイスを送る。
長男にとってはすべてが初体験、冒険なのだ。採集云々よりも
自然の偉大さなど、いろんなことを吸収してほしい。

何とか狙っていた倒木に辿り着き、さっそく2人で削る。
まずまずの状態だが堅いところを長男が叩いているので、
まずキノコの説明から入る。この材はちょうどニクウスバタケとダイダイタケが
寄生しているので、その違いやオオクワの♀が産卵しやすい場所などを
指し示す。どこまで理解しているかは分からないが、後は体験あるのみだ。
そのうち、コクワの幼虫が出た。食痕の特徴や色などを教える。
「ふ~ん」と長男。コクワは眼中にないようだ(笑)
ま、目標は高いほうがよろしい。

だが、この材は可能性が薄いのであきらめて移動する。
さすがに斜面もきついポイントだけに材探しは長男にとってまだ厳し過ぎる。
次のポイントは誰でも知っている通称「恥ずかしV字谷」。
なぜ恥ずかしいのかというと道路から丸見えで、採集やっているぜ、と
指を差されてしまうのである。細い河川の敷地なのだが材は倒木と立ち枯れが
たくさんあって、初心者向きなのだ。それでも白カワラ、オオヒラタケで
朽ちていて、かつては大型のオオクワが爆採れしたこともあった。
おそらく現在でも丁寧にみていけば、ゲットの確率は高い。

しかし、ここはイバラが多く、急斜面とあって子どもにはきつい。案の定、
バラにやられ斜面からは滑り落ち、倒木と倒木の間に足がハマり
「助けてくれ~」と泣きが入るなど散々だった。いや、いい経験だったはず。
そうこうしているうちに何と雪が降ってきた。車に避難して弁当を食べ小休止。
さてどうするか。気温は6度あるので積もる状況ではない。次のポイントに
移動しつつやむのを待つ。

そろそろ昼、ここらでゲットしたいものだ。
だが、長男は眠気が襲ってきたらしく夢心地。
道路端に駐車して1人でポイントへ。ここはずっと寝かせてある秘蔵の場所だが
2年前に来たときにはまだ早かった。そろそろいいだろうと期待して入る。
倒木と立ち枯れがかなりあり、白カワラがメインだ。なので1本に対し
「ここだろう」という部分のみしか割らない。もったいないのである。
端からチェックしていくがオオクワの姿は見えない。

それは何本目かの切り株だった。真ん中を割るといきなり極太食痕が出た。
混じる糞はクワガタのそれであり、しかも大きい。やったか?
上に食痕が続いていないので、下から食い上がったノコギリの可能性もある。
慎重に崩していくとすぐ下から巨大な腹部が現れた。
その太さは尋常でないことはすぐに分かる。

「お前はいったいなんだ?」

思わず映画・プレデターのラストシーンのセリフを思い出した。
そっと刺激すると頭がゆっくりと食痕から出てくる。緊張の一瞬だ。

その巨大幼虫の正体は・・・・!

のそりのそりと巨大幼虫が回転し、頭が見えてくる。
色はオレンジ、アゴは細くて直線に伸びる。
何より形が角張り、オオクワとすぐに同定できる。

「やった~~~!」

半端でない大きさ、特大というより巨大という言葉が一番似合う。
だが、次の瞬間「このまま埋めておこうか」と思った。
秋に割れば、軽く70ミリを超える黒虫がでてくるはずだからである。

でもここまで出してしまえば、ヘタに埋めても隙間から
寄生蜂や雨が侵入したりして、★になる可能性が高い。
やっぱり取り出すことにした。
貴重なシーンなので長男を呼びつつ、撮影機材も取りに行く。
ちょうど、目覚めたところだった。
材に案内し、腹部を見せる幼虫を見て、
「デカい!」を連発する。木の枝を渡し噛ませて
ひっぱりだすように指示する。その間、ずっとビデオやカメラで
撮影していく。

ようやく噛んで、ゆっくり引き出し、長男の手の平に
ゴロンと横たわる。ついに全身の姿を確認できた。

「なんだこれ!」想像以上にデカイ。
どう見ても軽く20グラムをオーバーしている。
推定、23~24グラムぐらいか。
ただただびっくりするばかりだ。
このクラスを採集したのは、大昔、それもまだ量る概念がない
ころの話だ。量るようになってからは20グラム前後は何頭かあるが、
軽く超えるサイズは滋賀県以来だと思う。

しかも色がまだ白っぽく、成長の余地を残している。
通常このサイズになると脂肪が乗り、黄色になることがほとんど。
つまり、このまま熟成すればとんでもない親になった可能性が高い。
ますます残念な気持ちが頭をよぎる。
でも出した以上は、最高の親に育てようと心に決めた。

撮影を終え、食痕を確認していくと、テニスボールを楕円にした
程度しか食痕がない。典型的な居食いである。
これは巨大になる条件の一つでもある。さらにどこに産卵したのか
追っていくと、土とすれすれの横側から細い食痕が伸びていた。
やはり乾燥しやすい上部ではなく横からだった。切り株では
普通の産卵パターンである。

そしてこの材からは、この1頭だけしかいなかった。
これもよくあることだ。おそらく共食いしたはずである。
巨大化する♂幼虫は、しばしば共食いを繰り返し、
その材を独占することがある。
久しぶりにみる光景だ。

幼虫の取り出し、撮影も終わり長男と林を出る。
あれだけ降っていた雪はいつの間にかやみ、青空が見えていた。
気持ちも空のように晴れやか、満足感でいっぱいである。

「そうだ、池さんに電話しよう」

クワ仲間ではいちばん情熱を持っている採集名人である。

「池さん、今山梨で20グラムオーバーが出ました!」

「え、ほんと?それじゃこれからそっちへ行きますよ」

待ち合わせ場所と時間を決めて電話を切る。が、半信半疑である。
「いったい静岡から何しに来るんだろう」と思わずには
いられなかった。なぜならこの時間から山梨に来るとなると、
到着は夕方。従って採集は不可だ。
明日は仕事と言っていたし、いったいどうしたんだろう。

よく分からないまま、待ち合わせまでは時間があるので、
次のポイントへ向かうことにした。
おっと、忘れていた毎年恒例の「武田神社」への初詣だ。
ええい、またの機会にしよう(笑)

ナビにセットしてあったのでスムーズに到着する。
なかなかの立ち枯れがあったはず。
探しだすと誰も割っていないものの、産んではいなかった。
周囲をチェックすると背丈ほどのボサの中に、
一見終わった立ち枯れを見つけた。だが何かくさい。
車までいったん戻り、脚立を持ってきて上部を割る。
案の定、いい状態の部分が残っている。

ゆっくり削っていくと、コクワが数頭出てきた。
その中に真っ直ぐ下に繋がっている食痕がある。
追っていくとコクワではない、2令らしき幼虫が出た。
オオクワか?しかし頭色が薄い。形、アゴ、頭幅は、
オオクワの特徴である。続いて同じ幼虫がもう1頭。

あとはコクワのみ。そろそろ時間なのでこの2頭をキープしておく。
気分的には情けない。しばらく採集から遠ざかっているせいか、
この程度の幼虫の同定に迷っているからだ。
実は何度もケースを開けて見ていたのである。
もし、池さんに見せてオオクワでなかったら・・・。
さすがにショックだろう。

待ち合わせは、温泉の駐車場。池さんが来るまで長男と温泉で、
汗を流す。運動した後だけに特に気持ちがいい。
出たころ、ちょうど池さんがやってきた。さっそく
幼虫を見てもらう。

池さんの反応は・・・・・・!?

池さんとの電話の会話で、こう言われていた。

「オーさん、私が行ったら『幼虫が15グラムに縮んだ』なんて
言わないでくださいよ、アハハ」

いや笑えない、実際にはよくある話しだ。
野外採集ではたいてい大きく感じるのである。
「15グラムかあ、いやどう見ても20グラムオーバーだよなあ」
気になって何度もケースを開けて確かめていたのだった(笑)

新年の挨拶もそこそこに、さっそく幼虫を見てもらう。
食い入るようにケースを覗くと開口一番、

「これはデカイ!私が先日採った19グラムよりひと回り以上ある」

「15グラムじゃなくてよかったですよ」

と言いながらも内心ホッとした。
池さんは持参したカメラで撮影を始める。
ひとしきり撮影した後、2令もチェック。
こちらのほうがいやな感じだ。案の定、

「う~ん、こっちは違いますね」

2頭のうち、1頭を見て言った。もう1頭は明るいところで見たい、
とのこと。これはかなりショックである。
でも自分の同定レベルが鈍っているのだから、仕方がない。

それからファミレスでクワから格闘技のことまで、
たっぷり4時間も話し込む。これがまた楽しいのである。
帰り際「2令が気になるから、もう1度見てみたい」と池さん。

今度はライトでしっかり照らして同定する。
最初より時間をかけたその結果は、

「これは九分九厘オオクワですね。こっちは♂、こっちは♀
だと思いますよ」

「え、ほんとうですか、いや良かった」

やはり私と同じく頭色が気になったとのこと。
オオクワはもっとオレンジ色が強い。ただまれに黄色味がかった
幼虫もいるのである。そこらへんが同定の難しい部分であり、
面白くもあるのだ。ちなみに頭幅は5.2ミリと4.7ミリだった。

ここで池さんと別れ、家路に着く。
道中、あることに気がついた。幼虫を入れる飼育ビンが
しょぼいのしかないのだ。
そこでクワ友が経営するクワショップに連絡しておき、深夜に寄った。

「こんなでかい野外産は見たことがない」と店長。
そこで計量することに。採集してからすでに12時間が経っているし、
フンも少なからずしている。だいたいこのクラスの幼虫はフン1つが、
0.5~0.8グラムある。もしかしたら20グラムを切っているか。

借りたデジタル計量器に載せると、数字は22.4グラムを示す。
想像したより軽くなってはいなかった。やはり採集した直後なら
23~24グラムだっただろう。

今でこそ、飼育技術が発達し菌糸ビンに入れれば、
このサイズくらいなら容易にでるが、野外では極まれであり、
たいへん貴重なのである。それは、長く採集を続けていればいるほど、
実感する。だからこそ、池さんがわざわざ3時間もかけて
見に来たともいえるだろう。

良質の菌糸ビンを手に入れ、ようやく自宅へたどり着く。
すぐにビンに投入し、これで1日が終わった。
いったいどのくらいの成虫になるか、夏までには判明しているだろう。
でも、一抹の不安はある。それは白カワラのエノキ材から出たということ。
菌糸ビンはオオヒラタケ菌なのだ。合わなければ最悪★もある。
こまめにチェックして様子がおかしければビンを替えようと思う。
何しろ、池さんはじめ、クワ仲間からはちゃんと飼育して!
と念押しされているので、失敗したら何を言われるか分からない。
ちょっとだけ、気合を入れるとしよう。。。

この日、 山梨にはT君が寺門ジモン氏らと採集に来ていて、
中歯型の親を含み10頭を割り出していた。さすがである。

まずい、採集熱が上がりそうだ(^_^;)                       


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